昨年末のステマ規制法施行に引き続き、2024年10月からは景表法改正が施行されることに。広告主・広告代理店各社はどんな対応が必要となってくるのでしょうか?
この度も、弊社の提携先である薬機法医療法弁護士協会を設立した弁護士法人ネクスパート法律事務所代表の寺垣 俊介弁護士に、ステマ法規制による変化を含めお話を伺いました。
- INTERVIEW寺垣 俊介弁護士
ネクスパート法律事務所代表弁護士。健康食品の販売会社や病院・クリニックに対して適切な法律助言を行い、ひいては消費者に適切な薬務・医療の機会を提供することができる社会の構築を目指して2020年に薬機法医療法弁護士協会を設立。
- INTERVIEWER高橋 隼
株式会社フォースリー パートナーコンサルティング事業部 アカウントコンサルティング1部 1課 ログリザ推進部 マネージャー。
ステマ規制法施行から今日までを振り返って
― よろしくお願いいたします。本日は、10月から施行される景表法の改正に関してお話を伺いたいと思います。
まず、本題からはズレてしまうのですが…昨年末の対談でもお伺いした、ステマ規制法施行から約一年が経ちました。この一年で目立った動きや、寺垣さんの中で「あのタイミングから変化があったな」と感じる点はありますか?
寺垣:把握している限り、摘発が措置命令2件と、行政指導2件がありました。初めての摘発は今年の6月だったと思います。おそらく、規制開始から半年ほどは様子見で、そこから動き始めた印象はありますね。
― ありがとうございます。約一年間での摘発事例は、お伺いした通り全4件ですが、件数は今後どうなっていきそうでしょうか?
寺垣:これからさらに増えるのではないでしょうか。優良誤認、有利誤認に関する摘発が年に30件ほどだったと思うんですよね。おそらく再来年ぐらいには、それぐらいの件数にのぼるのではないかと考えています。
― そこまで増える見込みなのですね…実際に摘発された例のように、違反している場合の「これはNG」という判断基準が結構わかりやすい、というのが影響としてあるのでしょうか。
寺垣:そうですね、少なからずその影響はあると思います。
景表法改正、知っておくべき3つのポイント
― ステマ規制法に関してはここまでとしまして、ここからは本題である10月からの景表法改正の概要についてお話を伺いたく思います。改めて、10月以降どういった変更点があるのか教えていただけますでしょうか。
寺垣:大きく分けて3つあります。
1つ目が、確約手続き。自ら不正を申告し是正措置計画を出して厚労省、内閣総理大臣から認めてもらえれば、措置命令、課徴金納付命令は受けない、というのが概要です。
2つ目が、違反行為に対する抑止力の強化です。課徴金を10年以内に2回課されてしまったら、2回目の額は1.5倍になる。あとは、いきなり罰則(直罰)があるという点ですかね。優良誤認表示、有利誤認表示はいきなり100万円以下の罰金があります。懲役はないんですけれども、一応理論上は逮捕される可能性もあります。逮捕までいく例はそんなにないと予想されますが、この先一年ほどで、摘発自体はあるかもしれません。
3つ目は、円滑な法執行の実現に向けた各規定の整備等ですね。外国の執行局との情報提供制約。国際化への進展への対応、といったところでしょうか。
最近よくあるのは、韓国の化粧品とか美容医療を日本で宣伝する、というお話。また、中国人向けに日本で何かイベントを企画したりだとか。やはり海外に関連したご相談は増えていますね。
改正の背景を探る 罰則はなぜ強まった?
― ありがとうございます。確約手続き、課徴金等含め罰則の見直し、そして海外への対応というこの3点が、今回の改正の概要ということですね。因みに、今回の法改正に至った背景でいうと、どのように見てとれますでしょうか?
寺垣:今回は、摘発の範囲が広がったというよりは、同じ範囲だけれども罰則が強化されたり、逆に自ら申告したら許しますとか、そういうお話が増えていますよね。
直罰ができたのはやはり、取り締まりを強化したい、ということでしょう。
おそらく、事業者側も「注意されたら直せばいいや」という人が多かったのだと思いますので、そこに対して厳しくしたいのでしょうね。100万円以下の罰金で前科がついてしまうので、運よく逮捕はされなかったとしてもそれだけは避けたいですよね。いわゆる書類送検というもので、取り調べは受けても結局逮捕もされないし、刑務所にも入らなかった、ということになるかもしれませんが、やはりみんな前科がつくことは避けたい。そこは厳しく行きます、逆に自ら申告した場合は許しますという、そんな制度になったんです。
― そうなのですね。これまでのルールだけでは、事業者側もそこまでルールを守れていないということから、一気に動いたイメージでしょうか?
寺垣:そうですね。いきなり刑罰があるというのは大きいですからね。
― また、これまで行政指導が入った場合、基本的には消費者庁のサイトにこういう企業にこういう違反があった、と公表されると思うんですが、直罰の場合においては、どういった流れになりそうでしょうか?
寺垣:消費者庁のサイトでの公表はされないと思いますが、ただ、「事実上」の公表はされるとは思います。というのも、警察や検察が事件のことをマスコミにリークすることって、ありますよね。同じような感じで、おそらく「第1号の摘発です」のような感じでガッツリと公表がされてしまうのではないか、と予想しています。
― 消費者庁側のページに載るかどうかは別にして、いわゆるニュースで取り上げられることは可能性としてあるということですね。私個人としては、今回の改正に関して、一気に来たな、という印象を受けたのですが、寺垣さんをはじめ法曹界でも同じような印象を受けてらっしゃいますか?
寺垣:確かにそうですね。今まで「薬機法は逮捕もありえるけれど、景表法はそのようなことはない」とよく言っていたのですが、景表法にもついにできたんだなと、そんな感じですね。
― やはり、そういった印象なんですね。もうひとつ、課徴金について質問させてください。10年以内に複数回違反してしまったら額を1.5倍にするという内容ですが、こうなった背景は、それを繰り返す事業者がいるからなのか、牽制という意味を込めてなのか、どうお考えでしょうか?
寺垣:牽制かと思われます。一回指摘を受ければ普通は気を付けて繰り返すことはないと思いますから。
― なるほどですね。とにかく、先ずは一回目の指摘も受けないことが大事ということでしょうか。
摘発を受けないために、具体的に取るべき対策は?
― 今回の変更点に関して深掘りもある程度できたかなと思います。
10月からの改正に向け、寺垣さんの元にもご相談や、今後の方針に関してのご相談のケースは増え始めていますか?
寺垣:いえ、今まで良かったことがダメになるというわけではないので、そこまで新たな相談が増えているという印象はありません。ただ、「気をつけなくては」という意識は上がるのではないでしょうか。
― なるほど、では改めて広告主の立場や我々のような広告代理店の立場で気をつけるべきことを具体的にお伺いしてもよろしいでしょうか?
寺垣:やはり、理想は社内にチェック体制があって全広告をチェックするということですね。
審査体制をきちんと作り、責任の所在を明らかにできるような対策をしていく必要があります。
景表法に関しては、最終的には事業者に対しての罰則になりますからね。
― わかりました。もう少し具体的なケースとして、例えば、アフィリエイターさんが記事を書いた。その記事の内容が優良誤認や、有利誤認につながる内容だった。そこが見つかり、摘発されてしまったとする。そうなりますと、責任の最終的な所在は基本的には広告主である、というのは今後も変わらないのでしょうか?
寺垣:そこの判断は少々難しいですね…。例えば、その記事の内容を知っていたら、もちろん責任を問われます。とはいえじゃあ「知らなかった」で済むのかというと、それも結構微妙なんですよね。
― なるほど、だからこそしっかりとしたチェック体制を整える必要がある、ということですね。
寺垣:おっしゃる通りです。
― そうした中で、アフィリエイターによる勝手な記事の改ざん、勝手な訴求をされないためにも、各社様には弊社のログリザを導入いただき活用いただいております。
現在、月に固定費10万円という形で提供しておりまして、導入いただいた場合、今回の法改定に対するリスク回避も可能かと。逆に導入しなかった場合は、確かにコストは抑えられるものの、万が一摘発されてしまった際のリスクとは常に隣り合わせとなってしまいます。
このように、景表法に関わることに対して指摘を防ぐためには、ぜひこのシステムを活用していっていただきたい、と弊社は考えております。
その点、寺垣さんのお考えはいかがでしょうか?
寺垣:ログリザは、チェックした履歴を残せると伺いました。
― はい。導入企業様にご提供している管理画面上では13ヶ月間残すことができて、大元である弊社のデータベース上では、システムに登録をした日付から2年間はデータとして残すことができます。企業様からこういうデータが欲しい、例えば、一年半前はこういう掲載をしていたというデータが欲しいなどのご依頼をいただければ、お渡し可能な仕様になっています。
寺垣:配信されている広告を本当に知らなかった場合など、普段からちゃんとこういう風にチェックしていたんだということを証明できたに越したことはないんです。だから、チェックした履歴などがシステムに残り、それを提示できる状態にしておくということは、良い対策になると思います。
― ありがとうございます。
おっしゃる通り、今導入していただいている企業様においても、エビデンスを取っておきたいという理由で導入いただいている企業様もあります。
また、会社として新たに監視体制の仕組みを築きたいというご意向をお持ちのところもありますね。チェック作業を目視でやっているだけだと、なかなか見え方が定まらないから、システムを活用した仕組みづくりをしたいということで、ログリザを導入いただいているケースもあります。
今後も、そういった使い方をしていただける企業様が増えてくると嬉しいですね。
本日はありがとうございました。より具体的なお話も伺うことができ、大変勉強になりました。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。